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巌谷栽松(がんこくさいしょう)

 例年のように、お正月の毛氈やお屠蘇の道具などを今日片づけた。雪に囲まれてはいるが、穏やかな日だった。床の間の掛け軸も雪村の達磨さんから「巌谷栽松(がんこくさいしょう)」に変えた。ふいに、ああ、後継者のことを考えなくては、と思った。「巌谷栽松」は『臨済録』の言葉で、そういう意味合いがあるのである。 外に出て山門の周囲の溶けかけた氷をスコップでどかしながら、まぁなんとかなるだろうと、根拠もなく思った。無風で、薄日が射していた。