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中村行明師

 4月2日、我が天龍寺で講演する機会があった。
 櫻がほぼ満開で、修行時代とは似ても似つかぬ風情だと思ったのだが、じつは櫻のほうは年々歳々同じように咲いていたのだろう。私のほうが、修業時代と全く違ってきているだけなのだ。
 思えば当時は、馬車馬のように、目隠しされてニンジン目掛けて走っていたようなものだ。近くで櫻が咲いていることに、気づいてはいたが、きちんと見てはいなかったのである。今ははっきりと櫻そのものが目に飛び込んでくる。鮮やかであり、また儚さも一際感じた。
 そんな枕から、講演は最近の定番「日本人の心のかたち」に及んだ。その場の雰囲気や反応を見ながら、話は毎回変わる。その加減が、「日本人の心」らしくて最近は面白い。
 さてその内容はともかく、講演後、控え室に中村行明さんという方が訪ねて来られた。インドに渡ったのが1976年というから、インド居住歴38年のお坊さんである。インド風の袈裟をまとっていらした。
 いろいろ話はしたのだが、最後に彼が作った音楽のCDをいただいた。それがあんまり佳かったので、ここにYoutube版をご紹介する次第である。聴いてみてください。ギターを演奏しているのが中村師である。https://www.youtube.com/watch?v=yQ_cc77qvyM

                 2014年4月4日  玄侑宗久 拝