日: 2011年4月20日

仮設住宅についてのアンケート結果

 非常に興味深いアンケート結果が出た。これは三春町の避難所に暮らしている避難民の皆さん、主に富岡町から逃れてきた人々の意識調査なのだが、仮設住宅ができた場合、申し込みをするかと訊かれ、申し込む人が29%。申し込まないという人が21%いたのである。そして一次避難所にそのまま居たいという人が31%もいる。
 誰しも、体育館や公民館、各種会館などでの共同生活を眼にすれば、今の暮らしを少しでも改善してあげたいと思うだろう。二次避難所としてあちこちの温泉施設も借り上げられ、そこに移動する人々もいるから、少しは状況も好転し、あとは仮設住宅ができるのを待つだけ、と思う人も多いかもしれない。
 ところが温泉などに行った人々も、2,3日経つと戻ってくるケースが目立っている。上げ膳据え膳で食事をいただくよりも、みんなと一緒に食べられる一次避難所に戻り、また雑魚寝のような生活に戻ってくるのである。
 これは、もしかしたら福島県だけに特徴的なアンケート結果かもしれない。仮設住宅は、家賃は無料だが、光熱費などは自前になる。ほかにも勿論毎日の生活費が必要になる。ところが彼らは単に家をなくしただけでなく、それまでの仕事や生活そのものが断絶された。仮設住宅に住んだとしても、その後の暮らしの目処がまったく立たないのである。彼らは非常に深い不安のなかに居り、じつは同じ不安をもつ避難者どうし、これまでどおり一緒に居たいのである。
 避難所には新たなコミュニティーが形成されている、という言い方もできるだろう。このコミュニティーを活かすやり方で今後の住宅を造らないと、本当にえらいことになるだろう。
 風呂やトイレが完備した定型の仮設住宅は、もしかしたら出来上がってもガラガラになる可能性がある。行政ごとに細かい聞き取り調査を行ない、その地域と避難民の意向に沿った住宅を造ることが何より求められているのではないだろうか。

 原子力発電所に対する複雑な感情もさることながら、仕事がない、ということが、彼らの不安の最大の要因である。
 そのことについて、今朝非常に意義深い提案書を持ってきてくれた人がいる。
 福島県の田村地区では、二年ほど前からエネルギー循環型の社会を目指し、菜種油から圧搾した油をディーゼルオイルに転換する事業をしている。しかもチェルノブイリ原発事故後の農地除染のために、日本は農産省を通じて菜種を寄付するなどの事業をしていたはずである。
 スリーマイル島の事故以降のアメリカでは、ヒマワリの除染能力に注目し、やはりそのオイルをバイオエネルギー化する技術を開発した。
 福島県内の各地に夏はヒマワリを植え、冬は菜種を植えて土壌を除染し、その労賃を国がもつ形で新たなバイオ産業を立ち上げようというのである。
 うちの檀家さんでもあるその人は、すでに菜種やヒマワリから油を圧搾し、しかもそれをディーゼルオイルに転換する設備を完成させた。
 なにより国際的にも注目されるこの事故後の対応については、今後の農地除染の努力が欠かせない。実際に汚染されているか、単なる風評被害なのかはともかく、福島県の農業者はそうした環境で今年なにをしたらいいのか深い戸惑いと不安のなかにいるのである。
 なにもせずにいたら、世界に対しても言い訳がたたないではないか。農業者の自活のためにも、この取り組みは真剣に考えられるべきだろう。真に風評被害を防ぐためには、土壌を除染するために何らかの努力をすること、そしてきめ細かい土壌測定による変化の確認こそが肝要だが、それによって現在困窮の淵に立つ農業者の生活を支えられるならば、こんな素晴らしいことはない。
 むろん国は、他にも除染の方法がないのかどうか、叡智を結集して対策を考えるべきである。軽々と「何年は入れない」などと、呟いている場合ではない。