このところ、いろんなことがあったのだが、まずは6月4日の復興構想会議の報告をしておこう。この日も検討部会から上げられた資料をもとに飯尾部会長から報告があり、主に「地域経済社会の再生」「エネルギー・環境」「減災・地域づくり」について話し合った。じつに具体的に幅広く検討されており、議論も有意義ではあったのだが、「地域経済社会」つまり製造業、農業、水産業、観光などについての部分で、風評被害の克服策などが全く盛り込まれていなかった。そのことに疑問を呈し、私としては福島県の場合、それを盛り込まなかったら全く意味をなさないと申し上げたのだが、残念ながら理解を得られず、「原発問題で扱えばいいだろう」ということになってしまった。
最近どうしようもなく感じるジレンマがこれである。つまり、福島県にとっては重大な問題でも、他県(岩手県、宮城県)にとっては関係ないこともあり、強くは主張しにくいのだ。
ちょうどこの日は、上野駅で降りて公園内まで歩いていくと、風評被害に遭っている各県の物産販売のテントが並んでいた。そこには千葉県、埼玉県、群馬県、栃木県などのテントもあり、それぞれ賑やかにさまざまな産品を販売していた。
私を見つけた何人かの福島県人が近づいてきて、「税制上の優遇策などを講じてもらえないと、わざわざ福島県に入ろうという企業さえなくなる」というのである。
たしかにそうだと思う。放射能に対する影響については、特に微量な場合には分析データさえなく、風評が大きく現実を形作っている。これは例えば、沖縄の米軍機の騒音や、高圧電線などの環境に苦しむ地区に似ている。実際の身体への影響ははっきりしない部分があるとしても、そのストレスが甚大であることは間違いない。そういった場合の補償を国がしたように、放射線被害に苦しむ福島県の産業人のことも考えてほしいということだ。
農業や水産業、製造業や観光などにおける原発の影響も、すべて「原発問題」のところで扱うというのだから、信じて待つしかあるまい。
他の話題で注目したのは、ソニーの中鉢良治氏からの中国帰国報告である。いわゆる再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱など)については、今後ますます期待されるわけだが、あれよという間に中国は世界最大規模に拡大しており、その博覧会を見て戻られた中鉢氏は、些か興奮気味にその報告をなさった。それによれば、中国は昨年一年間だけで、なんと1,650万Kw/Year。日本のこれまでの累積発電量が218万Kw であることに比べれば、まるで月とスッポンである。ウサギとカメのウサギのように、油断してうたた寝するのが長すぎたのかもしれない。
エネルギー・環境問題から、今後は目を離せそうにない。しかし問題なのは、再生可能エネルギーというのは、もともと集約的なやり方が似合わず、細かい地区ごとの状況に合わせて考えられるべきことだろう。だからぐいぐい一気に進めるのは難しいかもしれないが、日本人がもともと集約的すぎるやり方を好まないことを想えば、再生可能エネルギーこそが我々に似合ったやり方なのかもしれない。
どだい今回の問題は、電力会社に権力とも言うべきものが集約されすぎていた、そのツケが廻ってきたとも云える。
なんとか再生可能エネルギー開発の分野に、日本人らしい技術革新が起こってほしいものである。