世の中にはじつにさまざまなレベルの情報が溢れている。しかし本当に必要な情報が必要な人々に届いているかどうかは疑問である。テレビのニュースとか全国紙の一面にでも出ないと、多くの人の知るところにならない重要な情報もある。今回は、そんな情報のなかから、昨年8月17日に復興庁統括官の名前で出された文書情報を紹介したいと思う。
この文書が出されたのは、私が復興構想会議で訴えた神社仏閣の復興支援について、全日本仏教会(全日仏)が復興庁に質問状を提出したことによる。文化財や観光資源という観点ばかりでなく、寺社は東北において何よりコミュニティーの重要な拠点である。お墓や神社の復興をなにより重要と考える人々も多く、そうした点について、復興庁はどう考えているのか伺ったのである。
阪神淡路大震災や新潟中越沖地震のときには、復興基金の財団が設けられた。(財)新潟中越沖地震復興基金からは、鎮守・神社・堂・祠などの再建のため、補助金が出ているのだ。補助率は4分の3で最高2000万円(理事長が特に認める場合は3000万円)とされた。この財団が介在したことで、補助の対象もかなり弾力的に運用されたわけだが、どういうわけか今回はそんな財団も出来ていないのである。
まずは全日本仏教会(全日仏)への、復興庁の回答の一部を引用しよう。
「当庁といたしましても、地域の復興は、単にインフラや産業の再生で実現されるものではなく、地域の伝統や文化、コミュニティの再生等により、被災者の心の復興がなければ終わるものではないと考えており、基本方針においては、第1のみならず、第2、第3及び第9において(詳細は本文参照のこと)、地域の伝統や文化、コミュニティの再生等の視点や施策を盛り込んでおります。
皆様の施設につきましても、宗教施設であるからといって、直ちに国の施策の対象外となるものではなく、例えば、上記の地域の伝統や文化、コミュニティの再生等の面から、地域の復旧・復興施策の対象となり得るものと考えております。また、それは、施設の規模や観光客数で判断されるものではなく、地域の伝統や文化、コミュニティの観点からも、実質的に判断されるものと考えております。」
これが、復興再生の基本方針に対し、全日仏が出した意見書への2度目の回答の骨子なのである。
このようなニュースが、いったいどこかで報道されただろうか。テレビはともかく、せめて新聞くらいは載せてほしいと思うのだが、残念ながら見聞きした覚えがない。
被災地のご住職さんや神官さんたちも、おそらくご存じないのではないだろうか。基金運用のための財団はできていないものの、以上のような目的で基金を使うことはやぶさかでないと、復興庁自身がおっしゃっているのである。
まだそこまで手も目も回らない、というのが現実かもしれないが、どうか各被災地の宗教関係者におかれては、こうした支援があり得ることも念頭に置きながら、将来の設計に少しでも希望を見出していただきたい。
2013 2/28 玄侑宗久 拝