今どきの陽光は春の盛りよりも眩しく感じる。これはやはり待ち望む気持ちが感覚にも影響しているのだろうか。たしかに人は、ありのままの風景など見ることはできないのだろう。しかしありのままでなくとも、今の眩しさは嬉しい。そんなことを書いたら「おくりびと」を憶いだした。いや、この映画、私は未見なので憶いだしたのではなく想像したのだが、納棺士という人々はどのようなビジョンを持って仕事をしているのか、急に気になったのである。直接出逢ったことのある納棺士は、優しさと凛々しさの相半ばする素敵な人だった。しかし彼は、どんなことがあっても怒ることなどなさそうに見えた。そう、まるで死者に対するように。昨日、今日とあちこちの新聞社からアカデミー賞受賞についてのコメントを求められたのだが、いかんせん、見ていないものにコメントはできない。ああ、受賞するまえに見たかったと思う。いや、コメントしたかったわけじゃなく、受賞を知って見るのはまた別物になってしまいそうだからである。