ようやく春めいてきた。池にはまだ薄氷があるけれど、遠くの山の雪が砂糖菓子のように薄くなり、なにより木々の花芽が膨らみ、空気がとろみを帯びてきたのが分かる。かろうじて北国の一角に住む者ならではの喜びだろう。先日、境内で雪折れした桜の枝を拾い、台所で花瓶に挿しておいたら花芽が開きかけるほど膨らんできた。また大阪の釈徹宗さんとの対談に訪れた磐梯熱海の温泉宿では、やはり雪折れした梅の枝を室内で咲かせたものをいただいて帰った。この時期、雪折れした花木の枝には誰しも情が動くようだ。そういえば釈さんは、大学で教鞭をとる傍ら「むつみ庵」という介護施設を運営されている。浄土真宗は「情」の仏教と言い切る釈さんならではの、至難の実践である。南無阿弥陀仏。
2011年2月23日
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