タグ: 自著・共著

約束

 先日、朝日新聞社のホールで道尾秀介さんとの公開対談がありました。
 今回上梓した『竹林精舎』と道尾さんの『風神の手』の発売を記念して、ということで企画されたわけですが、本当はそれ以外にも曰く言いがたい因縁があったのでした。それについては道尾さんがわかりやすく書いてくれているのでこちらをご覧ください。http://michioshusuke.com/custom96.html
 しかも『竹林精舎』も『風神の手』も、風が一つの大きなモチーフになっています。
 私として一番気になったのは、道尾さんが『竹林精舎』を読み終えてどう思ったか、ということだったのですが、彼は「ああ、生きてる」と感じてくれたそうです。作家なのにこんな言い方しかできないと、謙遜していますが、私にはこれ以上ない讃辞と聞こえました。このときは、公開対談の会場でも控え室でもその後の食事でも、いろんなことを話したので、どこで聞いたのかよく覚えていないのですが、私があらためて同じ質問をすると、道尾さんはこんなふうにも答えてくれました。「これを読んでしまったら、『ソロモンの犬』は『竹林精舎』に出てくる彼らの前半の青春時代としか思えなくなってしまいますよ」。正確には写しきれていないと思いますが、概ねそんなことを言ってくれたのでした。
 私は大きな安堵を覚えると共に、これでようやく「約束」が果たせたと思ったのです。
 「書いていいですか?」「それは光栄で楽しみです」。このやりとりは「約束」とは聞こえないかもしれません。しかし私はいつしか道尾さんに出した手紙などで、「約束」という表現を使っていたようなのですね。本当のところは勝手な誓願だったのかもしれませんが、いずれにせよそれは今回、無事圓成したということで、これまでになかったような嬉しさを噛みしめています。
 『ソロモンの犬』(文春文庫)と併せ、味わっていただけたら更に嬉しいですね。
                   2018年 1月18日  玄侑宗久

関連リンク

書籍情報



題名
竹林精舎
出版社
朝日新聞出版
出版社URL
発売日
2018/1/4
価格
1800円(税別)
ISBN
9784022515131
Cコード
C0093
ページ
312
当サイトURL