日: 2006年11月29日

殿

最近、山形県の鶴岡市に行く機会があった。「蝉しぐれ」などの映画で注目を集める、藤沢周平氏の故郷である。藤沢氏原作の映画でも感じることだが、武士たちの清貧な暮らしや、殿さまの庶民を思い遣る気持ちが嬉しい。なるほどと思ったのは、この町には今も酒井家第十八代当主、つまりお殿さまが住んでいらっしゃるのである。現在館長をされている博物館を親しくご案内くださり、あまつさえ前晩には酒席を共にさせていただいた。今でも「お殿さまとか、殿とか、呼ばれるでしょう」と伺うと、「ニックネイムとして、ですね」とお答えになった。気さくだが、やはりどこか凛とした気配は、殿さまなのだった。なんだか嬉しい旅だった。