日: 2007年1月1日

新年のご挨拶 丁亥(ひのと・い)

新年明けましておめでとうございます。皆さんも穏やかな新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。今年は丁亥(ひのとい)という年回りになります。火は燃えて土を生むとされますが、燃えることで基礎を作る年だと、勝手に思うことにしました。さて、何に燃えるか、ということになりますが、やはり小説です。なんだか、去年のお正月にもそんなことを書いていたように思いますが、、、、。ともあれ、今年はイノシシの年ですから、やはり本来進むべき道をまっすぐ歩もうと思います。以前、インドネシアに行ったとき、私の運転する車の前にいきなりイノシシが現れ、自分が追いかけられているものと錯覚して、とにかく真っ直ぐ真っ直ぐ逃げるので恐縮した覚えがあります。あの思い込みの激しさは、無駄な消耗ではありましょうが、しかしなんとなく愛らしい動物だと思うのであります。些か禅的ではないかもしれませんが、今年は思い込みに向かって進みます。 2007年1月1日   玄侑宗久 拝 


ちなみにうちのお寺の掲示板には、「一々天真、一々明妙」と書きました。思い込みを離れた眼に見える清々しい景色なのですが……。思い込みを離れつつ、思い込みを続ける。これもアリでしょう。皆さまにとりましても、本願に近づく年になりますように。再 拝


<追伸>さっきはイノシシのイメージで書いてしまったが、この十二支に動物を当てはめたの は後漢の王充(おういつ)である。イノシシというのは、彼が勝手に当てはめた動物 だから、そんなに気にして逸ることもあるまい。調べてみたら十二支を使う国でも、 中国、韓国、台湾、モンゴルなどはイノシシだが、豚の年にしている国もある。チベット、タイ、ベトナム、ロシア、そしてベラルーシなどである。だから動物に拘る よりも、本来の「亥」の意味する「草木が枯れ果てて冬ごもりしている」状態こそ大事かもしれない。「丁(ひのと)」も陰だから、今年はとことん隠って書きたいものだ。根の充実を目指そう。(でも隠れないんですねぇ、これが。年頭から、とほほ)