ラオスでは、仏教以前の信仰である「バースィー」も上手に仏教に組み込まれている。これは日本のお寺や神社でお守りなどを売るのと同じ意味合いだろう。和尚さんが直接信者さんの手にbaci と呼ばれる紐を結び、健康や旅の安全などを念じながらお経を唱える。またお寺の境内には大抵籠に二羽ずつ入れられた鳥を売っており、信者さんたちはこれを買ってその場で空に放つ。鳥たちの感謝の思いが、やがて功徳になって返ってくるらしい。「慈悲」を受けるためにわざわざ籠に入れられる鳥たちも難儀だが、不殺生に対する意識は育つような気がする。ビエンチャンの大きなお寺で、私は住職さんにいろいろ質問させていただいた。非常に興味深かったのは、剃髪は満月の前日だけということ。日本の道場では4と9のつく日に剃髪するが、こちらでは釈尊の誕生も成道も般涅槃も満月の日だったとされるため、それに敬意を表するのだろう。また瞑想時の姿勢や足の組み方を伺うと、「好きにすればいい」という答え。この国での「型」は徹底して自然発生的である。「大切なのは心の平安だけ」というのもこの住職さんの言葉である。両手を前に翳したラオス独特の仏陀像の意味を、僧侶暦10年の通訳は Stop Fighting だと説明した。何をしたら入れられるのだろう、この真っ赤な部屋は修行者の懺悔堂である。