日: 2007年9月16日

学生時代

先日、NHKの取材に応じて学生時代のアパートを訪れた。なんと30年前に住んでいたアパートが、そのまま今も残っているというのである。場所は東京の三田だし、そんなことがあり得るのだろうかと疑いつつ行ってみた。すると、本当に当時のままにあるではないか。大家さんは亡くなってその息子さんの代。私が住んでいた部屋は、今は大学に通う大家さんのお孫さんが勉強部屋に使っているという。窓からは、昔と同じように墓地が見え、窓の外に当時から立っていた棕櫚の木がずいぶん大きくなったように感じた。最後の住人が2ヶ月ほどしたら出て、そしたらアパートもやめるとおっしゃる。つまり、間一髪で私は間に合ったのである。私はNHKのディレクターに言われ、当時書いた文章や描いた絵を探して持参したのだが、不思議なことに当時の気分がありありと甦ってくるのを感じた。場所の力というものなのか。それともこれは小説的な想像力なのか。いやしかし、当時の私が今も私のなかに生き残っているのも確かなのだろう。いずれにしても私にとってそれは、得難い体験だった。大家さん、そしてお孫さんのお嬢さん、当日はご迷惑をおかけしました。ありがとうございました。