日: 2009年8月24日

松花伴鶴飛

 「松花伴鶴飛」という言葉がある。「しょうかつるにともなってとぶ」と読む。よく結婚式などで「松に鶴」の絵柄が好まれたのはこの言葉のせいで、松の花が鶴の脚にくっついて知らない場所に飛んでいき、それまで縁のなかった土地に松の子孫が芽生えることの目出度さを、結婚の目出度さに喩えたのである。なるほど知らない土地に嫁ぐ新妻の素晴らしさは、そうしたご縁の受容にこそあるのかもしれない。ところがこの度私は兵庫県の豊岡に出かけ、この言葉の嘘を知ってしまったのである。豊岡といえば日本唯一のコウノトリの生息地。昭和40年代から始まった餌付けや孵化などの成功で、今や130羽以上のコウノトリが元気に棲息している。県立コウノトリの郷公園の総務課長山口直樹氏の話によれば、コウノトリは主に松の木に巣をつくるが、鶴は足の構造上けっして松の木にはとまることができないというのである。そうなると、先の言葉も本当は「松花伴鸛飛」だったということになる。しかし鸛がコウノトリだなんて、いったい何人読めるだろうか。