日: 2011年1月1日

新年のご挨拶 辛卯(かのと・う)

 新年あけましておめでとうございます。
 昨年は、政治の不振と不審と不信が目立ち、非常に混迷した年だったように感じますが、新たな年が始まったのを契機に、なんとか明るい年になってほしいものです。
 今年の干支は、辛卯(かのと・う)。辛とは、上と干との組み合わせで、地下にあった陽のエネルギーが地上に噴出する形です。卯というのもこれは陽気の衝動ですから、双方が合わさって大変なことになりそうです。ただ、膨大なエネルギーも、出口を間違えると紛糾、動乱になりかねません。要は、まっとうな革新のエネルギーになるために、保守すべきものをはっきりさせなくてはいけない、ということでしょう。
 革新が真に革新であるためには、その対偶である保守が明確にならなくてはならない。やはりこれも「両行」なのですね。
 翻って自分自身のことを想っても、要求に応じて流動する在り方を少し反省し、「根」を見つめる時間をもっと持つべきであるような気がします。
 「根」を見つめるということが、小説を書くことなのか、それとも他のことなのか、それはよく分かりません。
 去年は新しい弟子ができて副住職になり、お寺のほうにも大きな変化があったわけですが、そうした環境の変化によって、今まで気づかなかった「根」も生えているのかもしれません。
 ともあれ最近は、『根の営み』という父の写真集につけたタイトルが、しきりに思われてならないのです。
 今年もさまざまなご縁でいろんな「根」を見つけることが愉しみです。
 皆様もどうか保守と革新が双つながら盛り上がりますよう、お祈りしております。

平成23辛卯歳 元旦       玄侑宗久 拝